◆お芝居情報◆

【放送日】1999/07/22 【お芝居】壺めぐりて 夜もすがら

役柄役名出演者名
金太 桜 金造
和道 えなりかずき
三右衛門 魁 三太郎
お重 重田千穂子
お由美 野川由美子
お洋 長山洋子
勝造 綿引勝彦
お江戸でござる オリジナルソング
曲名
作詞
作曲




●杉浦日向子のおもしろ講座●
江戸風俗研究家 杉浦日向子
加筆・編集・補足 長尾武之介



◆本日の間違い点◆

●冒頭の所で黒い喪服をお召しになっていましたが・・・
喪服が黒一色になったのは、実は結構新しい事なのです。
太平洋戦争を境にして黒一色になりました。
それまでは、女性は薄墨色や水色、あるいは地味な色の無地を喪服として着用してました。

●お松さんとお重さんが貯め込んでいた大金30両が綺麗な山吹色の小判として壺の中に入っていましたが・・・
この小判で持っていたという所が不自然でした。
いろいろ節約してお金を貯めていたのなら、銭でないとおかしいわけです。
日頃、庶民が使う貨幣は銭なので、節約してためたのなら、
「銭がざくざく・・・」
という具合でないとおかしいですよね。(^^;

ただ、小判でないとセットでパッと見たときに30両って分かりませんから仕方のないことなのかもしれません。

●大家さんが店子のお金をネコババしようとしてましたが・・・
普通、大家さんと言いますと、人望が厚く店子から信用されている方なので、店子の私物をネコババしようとする大家さんは少ないですね。(^^;
(というか、いるのか?ホントに。(^^;)
大半の大家さんが雇われ大家さんでして、地主さんから大家さんという地位を預かっている訳です。
なので、不届き、不業績があるとクビになってしまうのです。
間違っても、ネコババしたお金で着物なんかを買ってはいけませんよ。
お由美さん。


●大江戸大家事情●

■大家の呼び方■
今回、家主さんという呼び方で読んでいました。
(公文書などに書くときは家主と書くのですが)
店子(たなこ)の方から、間借り人から呼ぶときは大家さんと呼ぶのが普通の呼び方です。
「家主(いえぬし)」は公的な呼び方。
店子からは「大家」と呼ばれた。

■大家の収入■
家主さんには2通りありました。
家持ち家主雇われ家主です。
家持ち家主さんというのは、たくさんの家作を持っていて、あがりでもって遊んで暮らせる言わゆる大地主さんの事なのです。
その下が大家さんになりまして、江戸中で20000万人を超す大家さんがいたと言われております。
現在の言い方でいうと、管理人さん兼行政の末端を担う人が大家さんだったわけです。

大家の収入ですが、幕末になりますが年に20両ほどいただいていたそうです。
月に換算すると1両と少しなる訳ですが、これは大変な高収入です。
また、この他にも雑費としていろんな副収入がありました。
これがなかなか大家さんのお小遣いとしておいしいところなのですが、長屋の惣後架の下ごえ、つまりし尿代を近隣の農家からいただております。
それに、長屋の住人が使っている味噌、醤油などの空き樽を売ることが出来ました。
惣後架(惣高架)(そうこうか)
長屋の共同トイレ。
集められたし尿は堆肥として、近隣の農村に売られ、家主の収入となった
当時、1両もあれば一ヶ月親子4人が暮らせるという時代だったので、なかなか良い職だったようです。
それゆえに、みんな大家になりたがります。
大家株という株が売買されて、安い物でも30両ほど、日本橋や神田などの一等地だと200両を超す株だったと言います。

■庶民たちが暮らした長屋■
浮世床,長屋
式亭三馬 「浮世床」より
時代風俗考証事典』より
(林美一著、河出書房新社、P146、1977)より

長屋の入り口が描かれております。
これは木戸になっていまして、朝開いて夜閉じるというものです。
長屋の木戸は格子戸ではなく、板戸(雨戸のような物)をはめ込みます。
この木戸は防犯のためです。
もし閉じてしまった後に出入りしたい場合は、長屋の月番といいまして、みんなが当番をしているのですが、月番を起こして、
「おい、開けてくれ」
と言わないと開けてもらえませんでした。

浮世床,長屋
上の絵には木戸の上にいろいろなにぎやかな看板が出ています。
右から、易者、灸を据える所、そして左端の口入れ屋さんなどありますが、この長屋に住まっている人のPRを兼ねた表札なのです。
武家屋敷などは一切表札がありません。
長屋にしか見られない風俗です。
浮世床,長屋,浅蜊の抜き身売り
手前にいる男の子は、数年前にえなり君の役どころであった浅蜊の抜き身売りです。

浮世床,長屋,麹売り
左下の男は、(こうじ)を売っています。
浮世床,長屋,大家
羽織を着た大家さんらし人がいます。

長屋には本当にいろんな人が住んでいる訳です。
俗に
「九尺二間」(くしゃくにけん)
という一番手狭で、しかもちょっと場所が外れた所にある一番安い長屋だと、月に400文くらいの家賃だったそうです。
これはだいたい職人さんの一日の手間賃に近いものでした。
長屋の軒数ですが、まちまちで、5軒くらいの所もあれば、12軒も押し込んでいる所もあったそうです。

大家さんは、とても頼られていて、そして行政の方からおふれが出ると、住人一人一人に告知しておりました。


■参考文献■

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