
式亭三馬 「浮世床」より
『
時代風俗考証事典』より
(林美一著、河出書房新社、P146、1977)より
長屋の入り口が描かれております。
これは木戸になっていまして、朝開いて夜閉じるというものです。
長屋の木戸は格子戸ではなく、板戸(雨戸のような物)をはめ込みます。
この木戸は防犯のためです。
もし閉じてしまった後に出入りしたい場合は、長屋の月番といいまして、みんなが当番をしているのですが、月番を起こして、
「おい、開けてくれ」
と言わないと開けてもらえませんでした。

上の絵には木戸の上にいろいろなにぎやかな看板が出ています。
右から、易者、灸を据える所、そして左端の口入れ屋さんなどありますが、この
長屋に住まっている人のPRを兼ねた表札なのです。
武家屋敷などは一切表札がありません。
長屋にしか見られない風俗です。

手前にいる男の子は、数年前にえなり君の役どころであった
浅蜊の抜き身売りです。

左下の男は、
麹(こうじ)を売っています。

羽織を着た
大家さんらし人がいます。
長屋には本当にいろんな人が住んでいる訳です。
俗に
「九尺二間」(くしゃくにけん)
という一番手狭で、しかもちょっと場所が外れた所にある一番安い長屋だと、
月に400文くらいの家賃だったそうです。
これはだいたい職人さんの一日の手間賃に近いものでした。
長屋の軒数ですが、まちまちで、5軒くらいの所もあれば、12軒も押し込んでいる所もあったそうです。
大家さんは、とても頼られていて、そして行政の方からおふれが出ると、住人一人一人に告知しておりました。