◆お芝居情報◆

【放送日】 【お芝居】

役柄役名出演者名
金兵衛 桜 金造
和吉 えなりかずき
三次 魁 三太郎
お重 重田千穂子
お由美 野川由美子
お詢 石原詢子
吉蔵 犬塚 弘
お江戸でござる オリジナルソング
曲名
作詞
作曲




●杉浦日向子のおもしろ講座●
江戸風俗研究家 杉浦日向子
加筆・編集・補足 長尾武之介



◆本日の良かった点◆

●三次さんの「ところてんの屋台」
「縦縞の 箱で売ってる ところてん」
という有名な川柳があるように、ああいった格子の涼しげな屋台を荷っていました。


●長屋のセットにあった向日葵
※「良かった点」として紹介されたわけではありませんが、内容から判断しました。

向日葵は、元禄時代の少し前から入っていました。
向日葵や日向葵、もっと昔の名前だと「丈菊」と言いましたが、元禄時代にはすでに「ヒマワリ」という名が一般化していたそうです。

「ヒマワリ」は日向葵(ひゅうがあおい)、向日葵(こうじつあおい)、丈菊(じょうぎく)の名で呼ばれた。

ただ、薬用として、漢方の「種」として使っていたので、なかなか長屋に植えている人はいなかったようです。

現代のように野原に咲いていることはなく、ちゃんと入手して植えないと駄目でした。


◆本日の間違い点◆

●三次さんが「朝100文借りて、夕方101文にして返す。つまり朝の鴉カァ~で借りて夕方の鴉カァ~で返すという鴉金」と言っていましたが・・・
朝100文借りて夕方101文返すというやり方は、鴉金とは別なのです。
借り方には2種類ありました。

三次さんがやった100文借りて101文返すというのは、そのまま「百一文」という貸し借りの仕方なのです。
これは、100文借りて101文返す場合の時だけに限りません。
場合によっては100文借りて、103文返すのも「百一文」と言いました。
百一文(ひゃくいちもん)
小売商人が仕入れ銭として借りた額に利子を加えて返済した。
これは、ちゃんとした金融業者ではなく、三次さんの様な振り売り(ぼて振りですね。)の商人がよく利用するのですが、仕入先の親方から借りるのです。
金融業者ではありません。
親方から朝100文借りて、売り上げが出たところから夕方101文にして返すというやり方なのです。
(借りたお金で仕入れて、売り上げの中から、利子を付けて返します。)
これは大変珍しい利子の付け方でした。

鴉金は、そういった細かい小さなお金を貸すときに言います。
朝の鴉カァ~で夕暮れの鴉カァ~という大意ではあるのですが、同じ100文を借りるにしても利子が天引きなのです。
(ここが百一文と鴉金の違い)
鴉金(からすがね)
借り入れ金からあらかじめ利子を天引きにして貸し付けた。
利子の額はその時その時で異なりますが、例えば100借りたいという時に96文しか現金として貸してくれないのです。
そして、夕方になったら100文にして返さなくてはいけないのです。
これは、親方ではなくて、零細の金融の方なのでした。

期限ですが、お芝居の中で
「十一で十日で一割が上限であろう」とありましたが、日済貸しで日にちで切って貸すものでした。
けれども、この十一もかなり高い方ですよ。
たいてい月に五両一と言いまして、五両借りて月に一分(一両の四分の一)の利子が付く月5%の利息が普通のようです。
五両一(ごりょういち)
五両の元金に対して、月利が一分(一両の四分の一)のこと。
年利にして60%

江戸時代の借金ですが、常日頃、庶民みんながやっていることでした。
それゆえ、後ろめたいことでも恥かしいことでもないのです。
というのは、
「自分の責任でもって返す当てがあって借りるのだから、無い所から借りるわけではなく、ある所から借りるのになにが悪いんだ?!」
という理屈があるのです。
ということで、高利と分かっていながら借りたというのは、借りる側にも責任があります。
奉行所に訴えでても、
「高利でも自分は返せるという自信があるのだから借りた」
ということなので、かえってしかられてしまいます。
(お芝居の中で、利息が高すぎるから訴えるぞ!とありましたが、逆にしかられてしまうわけですね。)


●大江戸夏場物売り事情●

■様々な夏の風物詩たち■
盛夏路上の図
「東都歳時記 盛夏路上の図」
東都歳時記2』より
(斉藤月岑著、朝倉治彦校注、東洋文庫、p86-p87、s45/12/10初版)

この絵は東都歳時記という有名な紀行のガイド本です。
絵に記されている様々な行商人達を紹介していきます。

ところてん屋
●ところてん屋
絵の右下に見えているのが、ちょうど三次さんが担いでいたところてん屋さんです。
三次さんの屋台には上に杉の葉が入っていましたね。
あれは、やっこを示している風景でした。

ここで、ほおっかむりをした男性がスゥッとところてんを食べています。
ところてんは、割り箸一本でチュッとすすることになっていました。
これは、「食事ではない、食事とは言えるような食べ物でないから、一本で十分だよ」という事なのだそうです。
当時も、酢と醤油と辛子で食べるのが主流でした。
女性や子供には、きな粉やお砂糖をかけて甘くしてという商いもありました。

水まき
●水まき(?)
ところてん屋さんの近くに、荷っていて桶の下から水がザァ~っと出ているのがあります。
今で言う散水車ですね。
ほこりが立たないように、水を道に撒きながら歩いてくれるのです。
たいてい町内会で雇って、「ウチのここからここまで水を撒いてくれ。」と頼みました。

冷水売り
●冷水(ひやみず)売り
その左側にある屋台が冷水(ひやみず)売りです。
深い井戸からくみ出してきた冷たい水を
「ひゃっこいひゃっこい」
と言いながら、一杯四文~八文で売りました。
この中には、お砂糖や白玉などを入れて、その量によって値段が8文~12文と値上がりしております。

「年寄りの冷水」ということを言いますよね。
実は、この冷水売りが語源なんだそうです。
若い人は夏場に冷や水を買って一気にカァッと飲み干します。
それでお腹を壊したりするわけですが・・・
年寄りがカァッといってお腹を壊すのはよした方が良いよという戒めになっています。

普通の陶磁器のお茶碗ではありません。
(すず)製のお茶碗に入れて出してくれるので、口当たりがひんやりして余計冷たくなるそうです。

天ぷらの屋台
●天ぷらの屋台
そして、その左にあるのが天ぷらの屋台です。
鰻と一緒に夏場にスタミナをつけようという事で、たくさん商われました。

定斎屋
●定斎屋(じょうさいや)
その上にあるのが、定斎屋(じょうさいや)です。
是斎屋(ぜさいや)とも言いました。
ゲストの犬塚さんのお話によりますと、小さい頃見たことがあったそうです。
小学校の頃、近所に担いでくるのですが、細長い黒の物に引き出しがたくさん付いていて、金具がついているそうです。
後と前を合わせて12個くらいあったらしいとか。
何やら歩き方が違うらしく、担いで歩くとともにゆっくりですが身体をゆすりながら「ザッザッザッザッ・・・」という音がしたとのことです。
その音で「定斎屋が来た」ということが分かったそうです。
犬塚さんのお話は、昭和十年~十一年くらいの頃の大森で見たとのことでした。

この定斎屋は、食中たりの薬粉薬を売っています。
定斎屋・是斎屋(じょうさいや・ぜさいや)
暑さに負けないための粉薬を売った。

煎じて飲めば食中たりをしないという事で、定斎屋さんは、その金具の音が売り声だったのでだまって歩くそうです。
本当に江戸の風物詩の一つでして、各家庭には必ず定斎是斎がありました。

水菓子屋
●水菓子屋
絵の真ん中の上にあるのが、水菓子屋さんです。
果物屋さんですね。
西瓜、瓜、桃などを好みに応じて剥いたり切ったりして売っていました。
当時の西瓜は初め沖縄の方から九州へ、そして次第に関西から江戸へと入ってきました。

川魚の鯉料理屋
●川魚の鯉料理屋
その右側にあるのが、川魚の鯉料理屋です。
鯉の洗いか何かで、殿方二人がおちょこを持って一杯やっている所です。

『近世風俗史』には
作り身、刺身の類を冷水にて洗ひ食す。(略)または鯉の刺身も洗ふ。その他、そうじて鮮なるは洗ひて可なり。けだし洗ひは夏用なり。
(「近世風俗史(1)」、喜田川守貞著、宇佐美英機校訂、岩波文庫、P101より)
とあり、夏場は洗いにして食べていたようですね。

虫売り
●虫売り
この後ろにあるのが、虫売りです。
くつわ虫、鈴虫、きりぎりすなどを売っています。
虫かごも見えますね。

『近世風俗史』にも虫売りの記述が見られます。
蛍を第一とし、蟋蟀(こおろぎ)、松虫、鈴虫、くつわ虫、玉虫、蝉(せみ)等声を賞すものを売る。
(「近世風俗史(1)」、喜田川守貞著、宇佐美英機校訂、岩波文庫、P282より)
とあり、鳴き声を楽しむ虫が専らだったようですが、そうでなくても蛍だけは格別の人気だったようです。
絵の中の子供も、お父さんに虫をせがんでいるのかもしれませんね。(^^

富士詣の一行
●富士詣の一行
その左側にいる一行が富士詣での白装束の一行です。

一つの絵の中に夏の風物詩がたくさんてんこもりに描かれているという、貴重な「盛夏路上の図」という絵でした。


■上原漫画「上原道場夏場風物詩 麦茶の争い」■
上原漫画
歌:歌代 半:半兵衛 武:武之介
:本当に暑い季節になりましたね~。
:やはり暑い時に冷たい物を求めるのは、人間として当然のことじゃ!
:だからって、人が作ったのを勝手に飲んで良いわけじゃないですってばっ!!(>o<)/
:何おぉぉぉぉぉ!!元々はわしの金ではないかぁっ!!
:「わし」ではなくて、「道場」のお金ですっ!!
:道場の金はすなわち、道場主のわしの金じゃぁぁぁ!!
:まあまあ~、お二人共、喧嘩をするとまた暑くなっちゃいますよ。
(ゴクッゴクッ)
:ああ~、おいしい~。(^-^)
:・・・歌代。お前はいったい何をおいしそうに飲んでおるのじゃ?
:えっ?はい。これは、そこに置いてあった麦茶ですわ、叔父上。
:ああぁぁぁぁ!それって、もしやっそこに置いてあったやつ??!!(゚o゚)
:はい。とても冷たく、おいしゅうございました。(^o^)
:ああぁぁぁぁ~!!!わしの夏がぁぁぁぁぁ!!(ToT)
:まさか歌代さんに飲まれてるなんてぇぇ~!!(ToT)

なんて事が、江戸のどこかであったかも?(笑)

■参考文献■

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