
「東都歳時記 盛夏路上の図」
『
東都歳時記2』より
(斉藤月岑著、朝倉治彦校注、東洋文庫、p86-p87、s45/12/10初版)
この絵は東都歳時記という有名な紀行のガイド本です。
絵に記されている様々な行商人達を紹介していきます。
●ところてん屋
絵の右下に見えているのが、ちょうど三次さんが担いでいた
ところてん屋さんです。
三次さんの屋台には上に杉の葉が入っていましたね。
あれは、やっこを示している風景でした。
ここで、ほおっかむりをした男性がスゥッとところてんを食べています。
ところてんは、
割り箸一本でチュッとすすることになっていました。
これは、
「食事ではない、食事とは言えるような食べ物でないから、一本で十分だよ」という事なのだそうです。
当時も、酢と醤油と辛子で食べるのが主流でした。
女性や子供には、きな粉やお砂糖をかけて甘くしてという商いもありました。
●水まき(?)
ところてん屋さんの近くに、荷っていて桶の下から水がザァ~っと出ているのがあります。
今で言う散水車ですね。
ほこりが立たないように、
水を道に撒きながら歩いてくれるのです。
たいてい町内会で雇って、「ウチのここからここまで水を撒いてくれ。」と頼みました。
●冷水(ひやみず)売り
その左側にある屋台が
冷水(ひやみず)売りです。
深い井戸からくみ出してきた冷たい水を
「ひゃっこいひゃっこい」
と言いながら、一杯四文~八文で売りました。
この中には、お砂糖や白玉などを入れて、その量によって値段が8文~12文と値上がりしております。
「年寄りの冷水」ということを言いますよね。
実は、この冷水売りが語源なんだそうです。
若い人は夏場に冷や水を買って一気にカァッと飲み干します。
それでお腹を壊したりするわけですが・・・
年寄りがカァッといってお腹を壊すのはよした方が良いよという戒めになっています。
普通の陶磁器のお茶碗ではありません。
錫
(すず)製のお茶碗に入れて出してくれるので、口当たりがひんやりして余計冷たくなるそうです。
●天ぷらの屋台
そして、その左にあるのが
天ぷらの屋台です。
鰻と一緒に夏場にスタミナをつけようという事で、たくさん商われました。
●定斎屋(じょうさいや)
その上にあるのが、
定斎屋(じょうさいや)です。
是斎屋(ぜさいや)とも言いました。
ゲストの犬塚さんのお話によりますと、小さい頃見たことがあったそうです。
小学校の頃、近所に担いでくるのですが、細長い黒の物に引き出しがたくさん付いていて、金具がついているそうです。
後と前を合わせて12個くらいあったらしいとか。
何やら歩き方が違うらしく、担いで歩くとともにゆっくりですが身体をゆすりながら「ザッザッザッザッ・・・」という音がしたとのことです。
その音で「定斎屋が来た」ということが分かったそうです。
犬塚さんのお話は、昭和十年~十一年くらいの頃の大森で見たとのことでした。
この定斎屋は、
食中たりの薬、
粉薬を売っています。
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定斎屋・是斎屋(じょうさいや・ぜさいや)
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暑さに負けないための粉薬を売った。
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煎じて飲めば食中たりをしないという事で、定斎屋さんは、その金具の音が売り声だったのでだまって歩くそうです。
本当に江戸の風物詩の一つでして、各家庭には必ず定斎是斎がありました。
●水菓子屋
絵の真ん中の上にあるのが、
水菓子屋さんです。
果物屋さんですね。
西瓜、瓜、桃などを好みに応じて剥いたり切ったりして売っていました。
当時の西瓜は初め沖縄の方から九州へ、そして次第に関西から江戸へと入ってきました。
●川魚の鯉料理屋
その右側にあるのが、
川魚の鯉料理屋です。
鯉の洗いか何かで、殿方二人がおちょこを持って一杯やっている所です。
『近世風俗史』には
作り身、刺身の類を冷水にて洗ひ食す。(略)または鯉の刺身も洗ふ。その他、そうじて鮮なるは洗ひて可なり。けだし洗ひは夏用なり。
(「近世風俗史(1)」、喜田川守貞著、宇佐美英機校訂、岩波文庫、P101より)
とあり、夏場は洗いにして食べていたようですね。
●虫売り
この後ろにあるのが、
虫売りです。
くつわ虫、鈴虫、きりぎりすなどを売っています。
虫かごも見えますね。
『近世風俗史』にも虫売りの記述が見られます。
蛍を第一とし、蟋蟀(こおろぎ)、松虫、鈴虫、くつわ虫、玉虫、蝉(せみ)等声を賞すものを売る。
(「近世風俗史(1)」、喜田川守貞著、宇佐美英機校訂、岩波文庫、P282より)
とあり、鳴き声を楽しむ虫が専らだったようですが、そうでなくても蛍だけは格別の人気だったようです。
絵の中の子供も、お父さんに虫をせがんでいるのかもしれませんね。(^^
●富士詣の一行
その左側にいる一行が
富士詣での白装束の一行です。
一つの絵の中に夏の風物詩がたくさんてんこもりに描かれているという、貴重な「盛夏路上の図」という絵でした。
歌:歌代 半:半兵衛 武:武之介
歌:本当に暑い季節になりましたね~。
半:やはり暑い時に冷たい物を求めるのは、人間として当然のことじゃ!
武:だからって、人が作ったのを勝手に飲んで良いわけじゃないですってばっ!!(>o<)/
半:何おぉぉぉぉぉ!!元々はわしの金ではないかぁっ!!
武:「わし」ではなくて、「道場」のお金ですっ!!
半:道場の金はすなわち、道場主のわしの金じゃぁぁぁ!!
歌:まあまあ~、お二人共、喧嘩をするとまた暑くなっちゃいますよ。
(ゴクッゴクッ)
歌:ああ~、おいしい~。(^-^)
半:・・・歌代。お前はいったい何をおいしそうに飲んでおるのじゃ?
歌:えっ?はい。これは、そこに置いてあった麦茶ですわ、叔父上。
武:ああぁぁぁぁ!それって、もしやっそこに置いてあったやつ??!!(゚o゚)
歌:はい。とても冷たく、おいしゅうございました。(^o^)
半:ああぁぁぁぁ~!!!わしの夏がぁぁぁぁぁ!!(ToT)
武:まさか歌代さんに飲まれてるなんてぇぇ~!!(ToT)
なんて事が、江戸のどこかであったかも?(笑)